ヒールの折れたシンデレラ
(ただの上司との食事がなくなっただけそれだけ)

千鶴はそう思いながらその後の仕事を片付けた。

ただまっすぐに家にかえる気分にはなれなくて、会社近くの居酒屋に理乃を誘って飲みに来ていた。

ぐぐーっとビールのジョッキを傾けて、口に着いた泡を手でぬぐう。

そんな千鶴の様子を理乃はため息をつきながら見ていた。

「何があったの?そんな勢いで飲んでたら潰れるよ」

そういいながらつきだしのタコわさびを勧めてくれる。

「何かあったわけじゃないの。気にしないで理乃も飲んで」

そういいながら空になったジョッキを持ち上げてカウンターにおかわりの要求をする。

「どうせ常務のことでしょ」

理乃の言葉に口にしていたタコわさびがのどに引っかかる。

胸をどんどんたたいているとちょうどビールが運ばれてきたのでそれで流しこんだ。

「あいかわらずわかりやすいんだから、金曜の夜にわざわざ付き合ってるんだから、ちょっと私に話してみなさい」

そう言われて、秘書課での異動で起きたことと心のもやもやを吐き出した。


「あんたそれ、本当に自覚ないの?」

「え?」

「え?じゃないわよ。確かにあの魔女と呼ばれる会長がどうしてアンタみたいな普通の子を秘書課に入れたかはわからないわよ。だけどそれはまぁおいとくとして」

「おいとくとして?」

「アンタもう二十七歳でしょ。“このモヤモヤ一体何~?”とかいまどき中学生でさえそんなこと言わないわよ」

「へ?」
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