ヴァージン=ロード

「今日はどこに向かうんですか?」
「そうだね、べたに夜景でも見に行こうと思っているよ」
「べたに、って。ふふ、おかしい」

 車を走らせながら、宗広さんがちらりと私を見て微笑んだ。

「本当は、こうやって伊咲さんの笑顔見ていられるだけでいいんだよ、僕は」

 なんてね、と笑う宗広さんの雰囲気がいつもと違っていて、どきりとする。宗広さんなのに、宗広さんじゃないみたいだ。
 でも、少しも嫌じゃない。

「私も、こうやって宗広さんとお話しているだけで楽しいですよ」
「そんなこと言って、僕を喜ばせるんだから」

 宗広さんが敬語を使っていないことに、ふと気づく。
 少しずつ、私達の見えない距離が近づくのがわかる。いや、宗広さんが私に近づこうとするのがわかる。
 それが、少しも嫌じゃなかった。

「そういえば、FlowerGardenコレクション見たよ」
「どうでした?」

 そういえば、3日前が発売日だったはずだ。翠さんが、初版が全部はけたと喜んでいたのを覚えている。

「いやあ、圧巻だったよ。みなさん、本当にすごい迫力だった。ISAKIさんは、今にも軍勢に切りかかりそうな勢いだったし」
「凄かったでしょう。結構、はまり役だと思ったの。それに、リキとかレアもあんな見た目だし、すっごく似合ってたよね」
「怜愛さんは貴族のお嬢様だっけ。女王様が栞さんだったのが意外だったなー。怜愛さんだと思ったのに。でも、凄くきつそうな女王様はあっていたけど」

 当の栞が聞いたら憤慨しそうなセリフに、私は思わず笑ってしまった。
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