生涯の人… 〜Dearest〜

“杏奈の気持ちを受け入れられない”

そう…、言われてる気がした。


好きになったばっかりなのに、そんなのないじゃん。
これからがドキドキする事いっぱいなのに、諦めさせるような事言わないで…。


「どう…して?」

やっとの事で絞り出した声は…、物凄く小さかった。

どうしてなんて聞かなくたって、遥の顔を見ればわかるのに…。

あんな顔…、好きな人を想う時じゃないと出来ないよ。
杏奈の見た事ない顔だよ…ー


「俺…、付き合ってた彼女がいてさ。

色々あってフラれちゃったんだけど…。付き合うならそいつ以外は考えられないし。

例えば…。キスとかそれ以上の事もそいつ以外ありえないっつうか…。」



それって、その彼女以外は無理って事じゃん。

杏奈じゃ無理って言われてるのと一緒じゃん。


ねぇ…、胸が痛いよ。

遥の彼女への気持ちを強く感じる…。



会った事もないのに、彼女に対して嫉妬でいっぱいになる。


ずるいよ…。 なんで…?


別れてるのに…、遥の心を占めてる彼女が羨ましい。

もう側にいないのに。

杏奈の方が絶対近くに居るはずなのに…。


心は彼女の側なんだね。



「杏奈、大丈夫?聞いてる?」




強く握り締めた拳が痛かった…。

でも…―



拳よりも、遥の心に拒絶された事の方が…。


痛かったよ…―





「聞いてる、聞いてる!

なんかビックリしちゃって…。


遥の心の中は彼女でいっぱいなんだなぁーって思ったら…、びっくりしちゃって…。」


「…うん。」




今までもそうだったのかな?
遥に恋した女の子は、好きを伝える前に拒絶されちゃうの…?


「…あれ…。ごめっ…。」







本当に…、ずるい人。



突き放すなら、最後まで突き放してよ…。


中途半端に優しくするなら、それ位の覚悟して…。









冷たい風の中で、抱きしめられた。

遥は杏奈の瞳を見つめて…。




一瞬…、躊躇ったくせに。

なのに…、抱きしめるなんて。



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