生涯の人… 〜Dearest〜

カウント

美容師の資格を取るには国家試験を受けて合格しないといけない。


試験は実技と学科に分かれてて、両方受かって初めて美容師免許が貰える。


1年に2回試験が開催されるんだけど、実技の内容はその年毎に毎回違うって書いてあった。



杏奈達の受ける今年の実技内容はワインディング競技になった。

ワインディングって言うのは要はパーマ巻きの事で、ウィッグに太いロッドから細いロッドまで…、隙間なく時間内に収めていく事。


得意、不得意があると思うけど杏奈は不得意な方だった。

試験がワインディングって決まった日から、放課後残れる日はタケと居残りして練習した。


やっぱり1回で受かりたいし…後悔したくないから。




今日は実技試験の日。


衛生監視員が入って爪の長さ、白衣の清潔さのチェックをされた。


久しぶりに長い髪を2つに結んで自分のクラスの番を待つ…。



洗濯仕立ての白衣がパリパリして緊張を高めてく。






待ってる間自分の手の平を見たら…、震えてる。

クラスの皆も口数が少なくていつもの教室とは思えない位の静けさ。



前のクラスは凪とタケがいる。

緊張なんて言葉が似合わないタケの肩が震えてたんだ…。


失敗したらまた半年後に見送りにされちゃう。



それが……試験の厳しさ。




成功を祈りながら目を閉じた時…、教室の扉が開いた。



「試験の準備が整いました。落ち着いてやれば大丈夫だから、皆頑張りなさい!!」


担任の声で一斉に移動が始まって周りの皆も立ち上がった。


廊下に出て最上階に向かう途中、凪が息を切らして走ってくるのが見えて…。



「ア〜ン!!…ハァ…ハァ……これ、凪がたった今使い終わったお守り…持っていきや!」




自分もいっぱいいっぱいのくせに…。



息を切らして駆け付けてくれた親友に目頭が熱くなった。



「…うん……頑張る…」

「うん!」




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