生涯の人… 〜Dearest〜

パンドラの箱

風が窓ガラスに反響してた。

ヒューヒュー鳴って少し怖い位…。




夜の海は誰も居なくて……車から聞こえる音楽と風で波打つ飛沫の音だけが響いてる。


変だよね…。

高速に乗ってる間は会話があったのに、今はどちらともなく話さない。



時々遥の鼻唄が聞こえた。


耳に届くその声は…、変わらないんだ。

今でも杏奈の胸を締め付ける。




「杏奈……後ろ行くか……」





座席を倒して遥が寝転がった。

両腕を伸ばして背伸びしてる。





仕事の後だもん…。


疲れて来てるの位わかってたよ。

さっきから欠伸の数が10回を越えてる。




でも…、わかってるのかな…?




緊張して横になれない杏奈の事。

久しぶりに会う遥に…、ドキドキが止まない事。







「あと少ししか一緒に居れないんだから……こっち来いよ…」




急に真顔で言わないで。



どうして…?何で…?


今になってそんな事言わないでよ。

一緒にはなれない…。

遥は杏奈の事なんて好きじゃないくせに。



「…う…ん……でも…」


戸惑ってるくせに…、側に行きたいって気持ちに押されてく。

触れたくて…存在を感じたくて……。


せまい後部座席にドキドキしながら移動した。

















ギュッ……って……。

抱きしめてくれた腕の強さに…息が止まりそうになる。




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