生涯の人… 〜Dearest〜


「これからどうするー?とりあえず朝ごはん行く?」

「つっても朝ご飯ていうより朝方ご飯だよね」



最後の睡魔を追い出してカラオケを出た。

結局あれから全員寝る事もなくて、出た足で牛丼屋に向かう事に…。


まず年頃の女の子では考えられない場所かもしれないけど、朝日が昇る前の牛丼屋はお客さんも2人しかいなかった。


「これからどうする?時間あるから初日の出見に行こうよ。」

まだまだ元気なあかりの提案にウトウトしてた詩衣の目が開いた。




「行く!ってか絶対見ないとダメだよね!」


杏奈、初日の出を友達と見るのも初めて…。

今年は詩衣達のおかげでたくさん“初めて”を経験出来たよ。



「よし、行こう!もぅー、南も寝ない。あっ、ほらアンも起きて!!」

あかりにたたき起こされながら徹夜明けの体を動かした。

寝てないせいか足が鉛みたいに重い。




「ちょっ…待って…。あかりテンション高すぎ…。」

「そうだよー!あたしはいつでも高いからね!!はい、立って!」


笑いながら腕を捕まれて、駅まで引きずられるように歩いた。



始発で向かったのは桜木町。

杏奈と同じ位の年代が徐々に集まってきてて、普段の夜明け前では考えられない人数になってた。

周りの人に続いて杏奈達も展望台まで上がると…。




雲と海の間からオレンジ色の朝日が顔を出す瞬間だった。

今まで見たどんな太陽よりも…綺麗。


太陽が海に反射してみなもがキラキラ輝いてる。

それを覆い尽くすみたいに…白く眩しい位の光りが追いかけてきて、言葉を失った…。




水平線に広がる一筋の光。

今年を知らせる鮮やかな輝き。


日の出が昇る瞬間4人で手を合わせた。

“幸せな1年が過ごせますように…”







オレンジが眩しいよ…。

目を開けてられない位…眩しい。




瞳を静かに閉じたんだ。

そしたら…、心の中に太陽の暖かさが入り込んできた。






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