俺のこと、好きになってみよ?






『……すみませんお客様、私なんかよりももっと素敵な女性はいると思いますよ?』



『ううん、君がいい』


『いや、だから……』


『君が欲しい』



いったいぜんたい、この人は何を言っているのだろう。


知り合いでもない、今日初めて会ってばかり。



『でも、ごめんなさい』


キッパリとそう言ってみると、男の人はシュンとした顔。

…いやいや、私悪くないからね?



『ま、そんなすぐに決めつけないでよ。あ、それとこれからこの店通うね』


『えっ、いや、あの…っ』


男の人は財布から一枚の紙を取り、スッとレジに置いた。





『じゃあね、また来ます』



そして男の人は、それだけ言って店を出て行ったのである。







< 13 / 85 >

この作品をシェア

pagetop