ウソつきより愛をこめて

***

「ねぇエリカ、今日のゆりちゃんの様子わかってるよね?…ちょっとヤバくない。大丈夫?」

「うん。ちゃんとわかってるつもり」

「セールの準備、今夜の閉店後でしょ?私、一時間くらい裏で残って作業していこうか?」

「平気平気。いいから早く帰りなよ。今日デートなんでしょ」

「え、あ、わかっちゃった…?ごめんねー、なんか私だけ幸せの絶頂で」

「初めから残る気ないだろ。むしろ閉店までやってけ」

「…えっ、やっぱりそうなる?」

「冗談だよ。私の顔が笑ってるうちに帰りな」

週末の合コンでめでたく彼氏をゲットした美月を、私は笑顔で店から送り出す。

クリスマスも年末年始も仕事漬けになるだろうから、会えるうちに思いっきりデートでもなんでも楽しんでおいたほうがいい。

…それが付き合いたてならなおさらだ。

「4番戻りましたぁ」

「あっ、はーい…」

今日の遅番は、ゆりちゃんと私の二人きり。

必然的に明日から始まる早期クリアランスセールの準備も、二人で担当することになる。

こんな日に限って、橘マネージャーは近隣店舗の巡回日で。

彼に会えないせいなのか、ゆりちゃんのやる気は一段となく、接客態度にまでその不機嫌さが滲み出ていた。

(何事もなく、終わればいいんだけど…)

保育時間の延長は、遅くとも二十二時まで。

寧々の負担を考えれば、今日の閉店作業は出来るだけスムーズにこなしたいところだった。

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