ring ring ring
 高林くんに、はるかちゃんが忠信さんに興味を持っていると聞いてから数日が経っている。その間、はるかちゃんからわたしへは、何のアクションもなかった。それどころか、彼女の口から忠信さんの名前が出ることもない。どうなっているのか毎日気になって仕方ないけれど直接訊くわけにもいかず、かといって情報源の高林くんは出張中で、LINEでメッセージを送ってみたものの返信がないので、わたしはずっとモヤモヤを抱えたまま過ごしていた。
 幸せそうな由紀を眺めるはるかちゃんは、いつも通りにこやかだ。さっそくクッキーを頬張りながら、由紀のベトナム旅行の話に相槌を打ったり驚いてみたり、表情がころころ変わってかわいい。
 「はるかちゃんも、旅行連れてってくれる彼氏が早く見つかるといいのにねー」
 「えっ?!」
 由紀の何気ない言葉に、過剰に反応してしまった。でも、わたしと同時に「えっ?!」と言った人が、もうひとり。はるかちゃんだった。
 「な、何よ、ふたりとも」
 由紀が驚くのも無理はない。いつもだったら、わたしも由紀と一緒になって「そうだよー」とかちゃかして、はるかちゃんはそれを受けて「やめてくださいよー」とか言って笑うのがオチなのだから。
 「何か、あったの?」
 訝しむ由紀の前で、わたしとはるかちゃんは目を合わせた。はるかちゃんは、バツが悪そうに笑った。
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