ring ring ring
 電話の相手は、忠信さんだった。
 「もしもし」
 『仕事片付いたよ。今日、由紀ちゃんと会うって言ってたろ。どこにいる?』
 「原宿のパンケーキ屋さん。来ても入れないよ、外すごい行列だから」
 『そっか。入ったばっかり?』
 「どうして?」
 『今夜企画のやつらと飲みに行こうって言ってるんだけど、美波たちも誘えって』
 「今夜?ちょっと待ってね。ねえ由紀、今夜企画部の人たちと飲みに行かないかって」
 「行く行く」
 言うが早いか、由紀はさっそく財布を取り出し、コートを手にした。もともとこの店に行こうと誘ったのはわたしのほうで、彼女にとっては、パンケーキやフレンチトーストなんかより、お酒のほうがずっと魅力的なのだ。それなのに1時間以上も文句ひとつ言わずに一緒に並んでくれるやさしさが、わたしたちを親友たらしめている。
 「ちょうど食べ終わったから、今からお店出るね」
 『悪いね、今表参道だから、そっちに行くよ』
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