ring ring ring
 ハンバーグは期待を裏切らないおいしさで、高林くんは、
 「ハンバーグうまい店っていっても、結局どこでも同じだろって思ってたけど、全然違いますね!パンもスープもうまいし、通いたくなっちゃいますよ」
 うれしそうに口いっぱいに頬張っていた。
 「口にあったみたいで、よかった」
 わたしが作ったわけではないのに、なぜか自分も褒められた気分になって、やっぱりうれしかった。
 「海野さんって、おしゃれですよね」
 「おしゃれ?そんなこと誰にも言われたことない」
 「そうっすか?だってこの間もバーでひとりで飲んでたし、食事に誘ったらすぐお気に入りのレストランとか連れて来てくれて、なんか、生活がおしゃれですよ」
 そういう高林くんだって、あの日はひとりでバーに来ていた。わたしがひとりで入れるようになったのは最近のことで、高林くんくらいの年齢だった頃は、バーカウンターでひとりグラスを傾けるなんてこと、自分にはまだ手が届かない世界のことでしかなかった。わたしに言わせれば、彼のほうがよっぽどおしゃれでオトナだ。
 でも、そう言われて悪い気はしない。わたしはちょっと得意げになって言った。
 「他にもおいしいお店たくさんあるから、また連れて行ってあげる」
 「ぜひに」
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