シニガミチェーンメール
十六日目



午前、四時三分。



また、綾介は起きて



ベッドから立ち上がり、



携帯を開いた。



シニガミチェーンメールが



くるのかと思うと、



寝てなどは居られないのだ。



青いカーテンから透き通る月の光が、



部屋をさらに青く染める。



月が太陽と交代する時刻、



四時四分に変わった。



「…なしか…」



綾介は安堵のため息と



怯えた声を出して、



恐る恐る、



携帯を見ようとした刹那。



「綾介?」



母が、部屋の扉を開けて、



顔だけを出して、覗きこんだ。



綾介は慌てて携帯を机の上に置く。



「…ノックくらいしろよ」



「綾介、あんた、いつもこんな時間に、
何をしてるの?」



母の優しくも厳しい光を放つ瞳が、



一直線に綾介に向けられる。



「綾介がいつも
この時間に起きてること、
知ってるのよ。
なにかあるの?
学校でイジメられたりしてるの?
話してみなさい」



母が、綾介の隣、



弾力のあるベッドに座った。



「…なんにもねえよ」



「嘘おっしゃい。
綾介は何か悩んでる時、
下唇を噛むから、荒れてる。
悩み事があるんでしょ?」



いつもとは違う、優しい母の声に、



綾介は本当のことを言いそうになる。



実は、シニガミチェーンメールが…



言おうとして、ルールを思い出した。



クラスメイト以外に言えば、消される。



「本当になんにもね〜からっ!」



綾介は母の暖かい背中を押して、



部屋の外へと追い出す。



「…解ったわ。でも、
悩んでいるなら、相談しなさい。
一緒に悩むから」



「解ったからっ!」



綾介はパタン、と戸を閉め、



ベッドにドサッと倒れ込む。



「相談…出来るもんならしてえよっ…」



綾介は知らぬ間に眠っていた。



短い夢を見た。



二十八人の揃った、一年二組の教室。



笑い声で溢れていた。



もう、元には、戻らない。



< 114 / 170 >

この作品をシェア

pagetop