冷たい上司の秘密の誘惑
「どうして、こんな子会社なんかに来たんですか?」

私は書類を拾う事に集中しつつ、そんな質問を投げかける。


「・・・仕事に決まってるだろ?」

篠田部長は、真顔で答えた。


「…昇進しようとしてた人が、何でここ何ですか?

何か大きなミスでもしたんですか?」

全部書類を拾い立ち上がる。

数枚は、篠田部長が拾ってくれて、私に手渡した。

…ぁ。

私は書類を受け取るだけのつもりだった。

篠田部長の手に触れないように、細心の注意を払って、

それを受け取ろうとしたのに、

書類を受け取った瞬間、篠田部長が、私の手を握った。


そのせいで、書類が少しクシャッとなる。

「…篠田部長、書類が」

「こうしないと、逃げるだろ?」

「・・・」


「ミスなんかしてない、オレは」

カツカツカツ・・・。

誰かが来る音がした。


「…誰かに見られるといけないので、失礼します」

私は、篠田部長の手を振りほどき、その場を足早に去った。
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