極上エリートの甘美な溺愛
「ちゃんと考えればわかるはずなんだけどなあ。篠田さんにはちゃんと恋人がいるし、その人も同席の上での契約だったのに」
呆れた声で呟きながらも、その表情はとても明るい。
慎はショールームの奥からこっそりと二人のやり取りを見ていた千春に視線を向け、笑顔を浮かべながら手招いた。
すると、慎に負けないくらいの笑顔で歩いてきた千春は、慎に向かって小さくピースサイン。
「ほんと、単純な男だね」
「ああ。こんなに簡単にひっかかってくれるなんて思わなかったよ」
「それほど玲華ちゃんのことが好きでたまらないんだよ。それなら最初からもっとガンガン攻めればいいのに」
のどの奥を震わせて笑う千春は、手にしていた資料を抱え直し、小さく息を吐いた。
「仕方ない。打ち合わせのことをすっかり忘れた将平の代わりにちょっと顔を出してくるか。まあ、こんなことだろうと思って資料を持ってきていて良かった」
「……お見事」
「なんのなんの。大切な同期の未来がかかってるからね。これくらいどうってことない」
「確かに」
慎と千春は顔を見合わせて小さく笑った。
入社以来、親しく付き合ってきた将平が、どんな女性ともつきあうことなく淡々と過ごしている様子を見てきたふたり。
お酒の席で将平が度々口にする『れいか』という女性の名前。
口にする言葉には、後悔と苦しさだけが溢れ、普段は見せない将平の心の奥底を見せられるようだった。