恋愛論




「俺何げにお前が初恋だったんだよなぁ…」


由宇が突然そんなことを言うから、あたしは驚いて由宇を見る。


「嘘じゃねぇぞ?」


笑いながら由宇が言う。


「今…彼女は?」


何となく知りたくて聞いてみる。


「いないよ」


「そっか」


…今の表情は何?


淋しそうな、少し苦しそうな微妙な表情。


「お前はいるんだろ?もちろん」


「いないよ?」


由宇は少し驚いて、あたしを見る。


「お前が?」


「遠恋なんて意味ないじゃん」


あたしが言うと、由宇は笑って、早紀らしいなって言う。


こいつはあたしの裏を知ってる。


あたしが騙して付き合った男の中で、唯一向こうから別れを告げられた男。


別に好きだったわけじゃないから、振られたなんて言わない。


あたしの価値が下がるから。


「遠恋もなかなかいいと思うよ?」


由宇はそう言って優しく笑う。


「ま、早紀には無理かもな」


そして皆の輪に戻って行った。









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