レンタル彼氏【完全版】
「………りさ」


「…………」


「解放してくれてありがとう」


「…伊織」


「………だけど、俺は一生許さない」


「!!」


「…………また、何もかも失ったんだ」


「……………」



俺が部屋から出て行くのをりさは呼び止めなかった。
俺も後ろを振り向いたりしなかった。


りさの泣き声が微かに聞こえたけど、俺は知らない。
それが俺とりさの最後だった。

こんな、呆気ない終わり方だったんだ。



これから。
どこに行こう。


まだ、麻酔が完全に取れてなくてふらふらする。

そんな俺が向かう場所は。


やっぱりここだった。
ここしかなかった。



「…………鈴恵、さん」



ぽつりと俺はそう、呟く。
そのまま、俺はたんぽぽ院の前で倒れて意識を失った。



二回目だ。
俺がここで意識を失うのは。


目を覚ました時。
やっぱり俺の目の前には鈴恵さんがいた。


「………鈴恵さん…」


「………伊織」



その、優しい顔を見て俺は涙が溢れて止まらなかった。
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