レンタル彼氏【完全版】
ここまで否定してしまうのは、聖に悪いけど…。


伊織を好きじゃなくなる事が本当に難しい。


ふとした時に思い出す。

駅前に来ると思い出すし。
夢で優しく私を抱き締めてくれたりもする。

本当に幸せだった時のことが夢に出てくる。


伊織。

また、きっと会えるよ。
だから、安心して。


伊織が他の誰かを好きになってても。
私は伊織しかきっと、見えないんだ。


「そういえばさ」

聖が思い出したかのように話を始めた。

「いずちゃん、お兄ちゃんいるでしょ?」


「ああ、うん。いるよ。
野球少年から青年になったお兄ちゃんがね」


「まじっ?俺、一人っ子だからなあ。
まあ、従兄弟はたくさんいるけど」


「そうなの?」


「うん、俺の母親五人姉妹なんだよね。
孫、合わせて十人以上。
うちだけだったよ、一人っ子」


「へえー」

メロンソーダを口に含みながら、感嘆の声を出した。

正月とか、集まったら凄い騒がしそうだな。
面白そう。
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