レンタル彼氏【完全版】
「…それでね、好きじゃなくなるんだったら。
とっくに諦めてた。
今も想ってたりなんかしない」


「!!」


ハッとして聖が息を飲んだ。

「連絡だって取ってなかった。
別れ方は最悪だった。

でもね、何でだか伊織のこと嫌いになれないんだ。

本当に笑っちゃうぐらいに」


最悪、最低男と罵れたらどんなにいいだろう。


もし、今会ったら。


文句なんか、全部吹っ飛んで。



ただ、ただ。









伊織を抱き締めると思う。



一人にして、ごめんねって。
側にいなくてごめんねって。



「……聖も、美佳さんのことおんなじ様に想ってるならわかるでしょ?」


「………………」


それから静かに、聖は涙を流した。



復讐が、負の連鎖の始まりならば。

誰かがそれを断ち切らないといけない。



私は、憎まないよ。




聖人なわけではない。


伊織と話せる機会を失った原因が、聖なら許せない気持ちはある。

でも、憎んでも……伊織は私の元へ来ないでしょ?
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