レンタル彼氏【完全版】
「………もしもし」


「もしもし?伊織?」

想像してたより、その声は明るい。

「…ああ」


「も~こないだ急に帰るしさ、どーしたのよっ!」


「…悪い…」


「まっ、いいけど!伊織がいないから彼女と仲良く過ごしたし」

チクチクと、胸に刺が刺さる。


「あっ、そうそう。
伊織に聞きたいことあったんだよね」


「…聞きたいこと?」


「うん、直接言いたいから時間作れない?」


「今言えばいいじゃんか」


「いや~電話じゃちょっとね」


「……明日なら暇」


「じゃあ明日!一時でいい?」


「ああ」


「じゃ、また明日!」


「……………」


暫く、ツーツーという機械音を聞いていた。

聖のこと。

友達だと思ってるのに。



俺の中にこんな醜い心があったなんて。



彼女って単語を聞く度に、過敏に反応してしまっていた。
自分が泉を好きな揺るぎない事実。


………聖。



黒いモヤが、また俺を包み込みそうだったから顔を思い切り振って、バイト先まで何も考えないように急いだ。
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