レンタル彼氏【完全版】
「…よかったな」



そう、ぽつりと呟いた。



「………うん」



聖のその言葉に胸がきゅうっとした。


どれだけこの時を待ったかわからない。



私…いつの間にか、成人しちゃったよ?



聖の電話を切ると、私は翌日着る洋服などをクローゼットを漁って決めることにした。


まだ、午前中だけど…多分、決まらないだろうから。



だから、今から決めておこうっと。

それで明日の為に早く寝るんだ。



伊織に、会う為に。





さっきの聖の電話を、全く疑問に思わずに私は明日を迎えるんだ。


いつもの私なら様子がおかしいことに絶対気付いたのに。




伊織に会えると浮かれていた私は気付けなかったんだ。





鈍感は卒業したって、高校を卒業してから思っていたのに。


私はいつまでも鈍かったんだ。





下手に期待させる言葉を、知らず知らずに言っていた自分がいて。


それで苦しめていただなんて。



知らなかったんだ。
< 651 / 813 >

この作品をシェア

pagetop