レンタル彼氏【完全版】
伊織がこれほどまでに苦しんでいたことを。



私は繋いだ手を解いて、伊織にしがみつくように抱きついた。

「い、ずみ?」



戸惑いながら伊織は声を出す。



「私にお似合いなのは、伊織しかいないから!!
こんな私にぴったりなのは伊織だけだから!
私は伊織以外嫌なの!
伊織じゃなきゃダメなの!!」


「……泉」



苦しくて、苦しくて、涙が出そうだ。


私は伊織だけを求めて今まで生きてきたのに。

お似合いだなんて、伊織に言われたくない。


伊織にだけは言われたくない。



「はは、今もそう思ってるわけじゃないから」


伊織は笑うと、そう言って私の頭を優しく撫でた。

その心地よさに目を閉じそうになりながらも、私は伊織を見る。


「俺にも、泉しかいない。
泉さえいれば他は何もいらない。
泉だけ、欲しい。
ずっとずっとそう思って生きてきた」




伊織も、ずっと私と同じように生きてきただなんて。

そんなこと思ってもみなかった。



そんなこと、聞いたらもう、涙腺は崩壊だ。

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