『世界』と『終』  ——僕がきみを殺したら——




———人に恋した死神は、翼を失い地に堕とされた———





本当に4階がなかったな、とエレベーターを降りながら思う。

目の前に広がるリノリウムの床、白い壁。
明るく清潔で、どこか消毒薬のにおいがする空間。

幅のひろい廊下だ。車いすやストレッチャーが通るからだろう。

ナースステーションを通り過ぎ、ネームプレートと部屋番号を確かめながら、歩く。

行き違った看護婦が、僕に視線をむけて、はっとした表情をみせ、あわてて目をそらした。
“ あの日 ” 以来、人から向けられるお決まりの反応だ。


——あれ、この男の子、ひょっとして・・・そう、絶対そうよ。あの事件の・・・まぁ気の毒に。いえ、じろじろ見たりしちゃダメだわ。いけないいけない・・・


“ 良識的 ” な思考パターンは、書いてあるように分かりやすい。


求める部屋は、ほどなく見つかった。一呼吸おいて、ノックする。


「どうぞ」
ドアごしに、低くやわらかい声がする。性別は判断できない。


開けると、予想よりせまい部屋だった。
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