Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「じゃあ、俺はバスだからここで」
 改札へ続く階段の前で、中野先輩が立ち止まった。
「はい」
「今日のこと、上手くデザインに生かそうな」
「はい」
「じゃあ、また仕事で。気を付けて帰れよ」
「はい」
 中野先輩はバスターミナルの方へ向かい、私は階段をゆっくり上った。券売機で切符を買い、ちょうど到着した電車に乗る。

 お腹も頭もいっぱいなのに心が空っぽな気がした。
 駅からアパートに向かってとぼとぼ歩く。日曜の夜ということもあって、車や人が多い。すれ違うカップルを見るたび、涼太に会いたくなった。
 中野先輩と別れた時のことを思い出してしまい、その連鎖反応で失恋した時の心の寒さまで思い出してしまったらしい。

 メールでもいいから、涼太を少しでも感じたかった。でも、毎日のように来る『おやすみ』メールが日付を回ってもなかった。
 届かないとわかっていても「涼太」と名前を呼んでいた。
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