Sweet Room~貴方との時間~【完結】
「ちょっと待ってください。水、持ってきますね」

 ずっと優しくて、温かったのに、急に冷たくなった気がした。その温もりを逃さないために、ネクタイを引っ張る。

「苦しいです」
「私、幸せになれる?」
「えっ?」
「私、幸せになれる?」

 無性に誰かに確認したくなった。嘘でもいい。「幸せになれる」って言ってほしかった。我慢ばかりしていた私なんて、幸せになれないことまで「仕方ないよね」と思って、我慢してしまいそうで苦しかった。

「なれますよ。幸せに」と言いながら、手を包み込むよに握られた。
「誰かを好きになるなら、杉山みたいな人がいい」
「俺ぐらいのレベルなら、どこにでも居ますよ」

 こんなに優しい人が自分を好きになってくれたらどんなに幸せだろう。弱ったとき、ただ手を握ってくれる。大丈夫って言ってくれる。
 私がいつも友だちや恋人にしていることばかり。でも、今の私にそういうことをしてくれているのは杉山だけだ。

「もう少し、ここにいて」
 酔っ払っているんだ。甘えてしまおう。何があってもお酒のせいにできるから。
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