「1495日の初恋」
恋の予感は隣の席で。

はじまる予感






春、四月。

中学三年の始業式。


着慣れた制服に身を包み、いつもの通学路を歩いていた。


やわらかな陽射しが、緑の隙間からキラキラ輝いている。

鼻先をかすめる風は、ほのかに甘い香り。



終業式のときは、殺風景だった通学路。

たった二週間で、その風景は一変した。


鮮やかな色彩の海に溺れて、しばらく立ち止まり、ゆっくりと深呼吸をする。


「いいこと、あるといいな…。」


見上げた空は、ピンク色に染まっていた。




私はまだ、恋をしたことがない。

夢も未来もあやふやで、何となく毎日を過ごしていた。


そんな私を、大きく変えた出会いが待っていようとは、このときはまだ知る由もなかった。





中学三年の春、私は彼と同じクラスになった。


転校してきた彼の名前は上原海斗(かいと)、出席番号3番。

私は上原結(ゆい)、出席番号は女子の3番。



新学期の最初の席は、出席番号順。
つまり、私は上原くんの隣の席。


二週間もすれば、このクラスにも、上原くんにも、だいぶ慣れた。

無口な上原くんと鈍臭い私は、クラスメイトの格好の餌食。


名字が同じってだけで、周りから「夫婦」と冷やかされた。


「おい、上原の嫁ーー!!夫婦なんだから、上原とやったのかーーー?」


「どうなんだよ?答えろよーー!」



私は、下を向く。
こんなとき、どうしていいかわからない。


「気にすんな。」


声に驚き、私は顔を上げた。

教科書に挟んだ漫画に、視線を落としたままの上原くん。


「言いたいやつには、言わせとけ。」


「…うん。」



胸がドキドキする…。
なぜだかわかんない。




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