縛鎖−bakusa−
 


沢村幸則はうんうんと頷きながら聞いて

『難儀な人生だなぁ』と同情してくれた。



嬉しかった。

霊力に関する話しを何でも話せる相手が出来て。



彼が余りにも親身に話しを聞いてくれるから、

一瞬いい人ぶりたい自分が顔を覗かせた。



沢村幸則のやり残した想いを聞いてあげようか…?

その足首の重い鎖を外してあげようか…?



しかし開きかけた口を閉じて頭を横に振る。



ダメだ…

二度とそんな事をしないと言う誓いを崩したら、今度こそ後戻り出来ない事態になりそう…



そんな私の葛藤が見えたかの様に、沢村幸則はこう言ってくれた。



『僕の想いを背負わなくていいよ。君の命を縮めたくはない。

他人に迷惑を掛けるのは嫌なんだ。

君に何をさせたりしないから安心して』



「…はい、ありがとうございます」





辺りは真っ暗になっていた。


外灯の下でスーパーマーケットのレジ袋を持ち、

ベンチの誰もいない空間に向け独り言を言う女子高生。



端から見たらさぞ不気味な事だろう。



でも幸いな事に公園内には誰もいない。


公園の前を時折通る人々も、私の存在には気付かず行き過ぎる。



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