縛鎖−bakusa−
 


「ううん、違うの。

あのクマは…リクの1歳の誕生日に沢村が買って来た物。

録音機能がついていて、あの人の声の誕生日メッセージが入っているの。

だから私が隠した。
理由は写真を処分したのと同じよ…

前を向かなければ…あの人を恋しがっていては先に進めない…

そう思って謙次さんが写真を処分した時に、クマのぬいぐるみも隠したの」



「そうだったんですか…
ごめんなさい…私余計なこと…」



「余計じゃないわ。

リクはクマのぬいぐるみが無いって暫く泣いていたから…

あの人は、リクにクマのぬいぐるみを返してあげなさいって言いたかったのね、きっと…」




私とミカさんは立ち上がり、畳みの部屋の押し入れの前に立つ。



戸を開けてごちゃごちゃと色んな物を掻き分けて、

使用していない布団の間から彼女はクマのぬいぐるみを引っ張り出した。



リク君は「クマ!あった!ヤッター!」と言って、

母親の手から奪う様に胸に抱き、頬擦りして喜んでいる。



これで私のイイ事ゲージは一杯になったのだろうか?

何か違う気がする…



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