縛鎖−bakusa−
 


淡々と説明する私を見て、指輪を見て、

彼女はゆっくりと息を吐き出し、それからぽつりぽつりと話し始めた。



「…… そう…だったの…
どこで無くしたか分からなくて…主人も亮介も知らないと言って…

家中探しても見つからなくて…

これ、母の形見なんです。

だから無くした事が凄くショックだった…」



「はい、亮介君はそれを知っていました。

あなたが必死で指輪を探し、見つからないと肩を落とす姿に、

自分がとんでもない事をしたのだと気付きました。

でも…言い出せなかった。

怒られるのは分かっている。

怒られるだけじゃなく、大好きなお母さんに嫌われるかも知れない。

そう思って打ち明けられず、後悔を引きずったまま事故で死んでしまった…

亮介君は今でもあのトンネルにいます。

あなたに打ち明け謝るまでは成仏出来ないのです」



< 149 / 159 >

この作品をシェア

pagetop