縛鎖−bakusa−
 


亮介君は嬉しそうに母親を見上げ、

母親もまるで見えているかの様に我が子と視線を合わせている。



抱き合いながらやっと長い呪縛から解き放たれ喜ぶ親子を見ていると、

涙が自然に溢れて零れ落ちた。



願いを叶えて良かったと思う。



自分の為ではなく、純粋にこの親子を救えた事を喜び、

そんなピュアな気持ちを取り戻せた事もまた嬉しかった。



数分して亮介君の輪郭がぼやけ始めた。


まるで気化する様に大気の中に消えて行く。



母親の腕の中で満面の笑顔が消えた時、

彼の最後の声がトンネルに響いた。



『母さん…僕ね…

次に生まれて来る時も…母さんの息子に生まれたい…』




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