Midnight Day
私が席に座ると、すぐに絵里が近づいて来た。
「あんた、佑斗をフったって…いったいどういうこと!?」
駆け寄って来るなり、絵里はそう言った。
それはそうだよね。
私が、嘘をついていたから。
自分の気持ちにも、絵里にも、佑斗にも。
今度は、素直になるね…。
「…ごめんね、前に会った月夜、覚えてる?」
「ああ、あのイケメンのお兄さん。」
「うん、その人ね、実はお兄さんじゃないの。」
「ふーん、そうな…って、はい?」
絵里はスルーしそうになってからその話に食いついた。
「最初はね、振り回されてばかりで大嫌いだった。あんな奴の彼女とかほんとごめんだった。
…でも、いつの間にか好きになってた…。
騙しててごめん。月夜は私のお兄さんじゃないの。詳しいことは言えないけれど、今は私の大好きな人…です。」
絵里は何も言わなかった。
少しの間、私たちの間に静かな空気が流れ、私は少し不安な気持ちになった。
「…あの…絵里?」
「…よかったね、好きな人が見つかって。」
静かな空気を払うように、絵里は笑顔でそう言った。
その瞬間、張りつめた心もすっと晴れた気がした。
「ありがとう、絵里。」
「ただ、嘘はよくないよ、嘘は!」
そう言うと、絵里は私のオデコにデコピンをした。
「…ごめんね。」
「ううん、いいの。
何か事情があっただろうから。
…ただ、今回は負けないで。
思い、きちんと伝えてね。」
「うん、頑張る。」
ありがとう、絵里。
絵里が私の親友で、本当によかった。