過保護な妖執事と同居しています!


 私の疑問を察したかのように、ザクロは続ける。


「私は主の幸せを何よりも望んでいます。たとえ主が私を必要としなくなっても、幸せでいてくれるならそれで十分満足していました。頼子にも幸せでいて欲しいと思っています。けれど私以外の誰かと幸せになっていく頼子の姿をそばで見ていることは辛くてたまらないんです」


 それってあの小説の執事、ロベールと一緒だ。バレンタインの夜に見たザクロの迫真の演技は、演技じゃなかったってこと?


「私はいつかきっと頼子との約束を破ってその誰かを傷つけてしまうでしょう。だからそうなる前に頼子と別れることにしました」


 なにそれ。まだ傷つけてもないのに、傷つけるかもしれないから別れるって、どんだけネガティブなの。

 ていうか、前からそうだけど、私が傷つかないようにって壊れ物扱いしすぎ。反射的にイラッとして、私は怒鳴っていた。


「ふざけないでよ! こんなに依存させておいて、いまさらザクロのいない生活に戻れるわけないじゃない! 自分が辛いから逃げるなんてずるい!」


 ザクロは困ったように視線を落として俯く。


「申し訳ありません。私は自分の気持ちがわからないんです。あなたの幸せを願いながら、あなたを独り占めしたいと思っています。妖(あやかし)の私ではあなたを幸せにすることはできないというのに」

「何が私の幸せかなんてザクロにわかるわけないじゃない! 独り占めしたいなら独り占めしてよ!」

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