過保護な妖執事と同居しています!


 やりきれない。家に帰ってからも、私は先ほどの怒りをひきずっていた。困惑に揺れるあの子の瞳が脳裏に浮かぶ。それを思い出すと、大人げなかったとも思う。あの子は親に言われたとおりに動いていただけだろう。

 だからといって寄付をする気にはなれない。詐欺ではないけど、やり方が汚い。

 私はすがったベッドの上に拳を叩きつける。食事の支度をしていたザクロが、何事かと慌ててキッチンからやってきた。


「何を怒ってるんですか?」
「だって、なんて親なの! 自分の子にあんなことさせるなんて! あんな小さな子にお願いされたら寄付しないわけにいかないじゃない。年寄りなんかホイホイお金を出すわよ」
「いけないことなんですか?」


 妖怪にはピンとこないようで、ザクロは不思議そうにきょとんとして首を傾げる。


「いけなくはないけど! 人の心につけ込むなんて、やり口が汚いじゃない」


 私がもう一度ベッドに拳を叩きつけると、ザクロは少し悲しそうに笑った。


「私もあの子の親と同じですよ。女性の傷ついた心につけ込んで寄生する妖ですから」
「違う!」


 叫びながら私は立ち上がる。ザクロを傷つけたり非難するつもりはなかった。


「ザクロは私を幸せにしてくれるでしょう?」
「頼子にはずっと幸せでいてほしいと思います。でも私では頼子を幸せにすることはできません」


 どういう意味? ずっと一緒にいるんでしょう? ザクロがいると結婚できないから? 結婚なんかしなくても幸せになることはできるでしょう?


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