過保護な妖執事と同居しています!


 自宅マンションの前で本郷さんと別れ、私は家に戻る。玄関を開けると、いつものようにザクロが恭しく出迎えてくれた。その姿になんだかホッとする。

 着替えとお風呂をすませて私は鏡の前に座った。ザクロが後ろにやってきて、私の濡れた髪をタオルで包む。

 こんな風に当たり前になってしまったザクロに依存する生活も、結婚したらがらりとかわってしまうんだろうな。そんなことをふと思う。

 本郷さんには申し訳ないけど、やはり頼りになる上司か話しやすい先輩以上には思えない。

 そもそも私の理想を体現したザクロ以上に私の心を捉える男性なんているんだろうか。おまけにザクロには胃袋までも掴まれている。

 本郷さんの話は断るつもりだけど、そうすると会社を辞めることになるかなぁ。部署が違うならまだしも、本郷さんは直属の上司だし。気まずさが半端ない。

 せっかく坂井くんが使えるようになってきたし、今の仕事にも少なからず思い入れがあるのになぁ。

 断るだけでも気が重いのに、それを思うと益々沈んでしまう。思わずため息をもらしたら、髪の水気を拭き取りながらザクロが尋ねてきた。


「何か心配事でもあるんですか?」
「うーん。会社辞めなきゃならないのかなぁと思って」
「何かあったんですか?」
「う……ん」


 どうしよう。ザクロに話してみようか。

 約束したから本郷さんを傷つけたりはしないと思うけど、どんな反応をするのかはちょっと気になる。

 私は意を決して口を開いた。


< 96 / 127 >

この作品をシェア

pagetop