可愛くないって言わないで!!


「もっと自分を大事にしろよ、真衣」


「……コウ?」


「大丈夫だ気にしないってお前は言うけど。俺にはたまに、お前が傷だらけで立ってるように見えるんだよ」




傷、だらけ?


あたしが?




「痛々しくて、黙って見てらんねーよ」





一瞬、


波の音が消えた。



からみ、止まり、ほどけない視線。




心臓の音だけが、どこか遠くで聞こえていた。




ふと、コウの薄茶の瞳がふせられる。


その瞬間、すべての音が戻ってきた。




コウの耳が赤いのは、太陽のせいだろうか。


でもきっと、あたしの頬はそれ以上に赤い。




ねえ、コウ。



なんであたしを気にしてくれるの?


なんであたしに優しくしてくれるの?




言ってくれなきゃ、うぬぼれるよ。



勝手に好きなように考えちゃうよ。


< 169 / 289 >

この作品をシェア

pagetop