可愛くないって言わないで!!


ああ、やっぱり。


ムカついてはいるんだね。


特に小津くん、てとこはあたしと一緒だ。




「沙弥が嘘ついてたことをゆるせないんじゃねえ」


「じゃあ……なんでそんなにつらそうなの」


「俺は……俺がゆるせない」




コウの手の中で、パピコがパキッと音を立てる。




「沙弥に嘘をつかせてきた、俺自身がゆるせないんだ」




誰よりも、コウは自分に対して怒ってるように見えた。




ねぇ、コウ。


アンタは本当に、どれだけ沙弥が大事なの?




そういうコウと沙弥の関係を目の当たりにするたび、


あたしはすぐにでもこの恋を手放したくなる。



大切に大切にしていきたいのに、


つらくて苦しくて、どうにかなってしまいそう。




コウも沙弥も、


ふたりともあたしにとって、比べられないほど大切なのに。



あたしはふたりのことが同じくらい妬ましくなる。

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