キアギス
「とある人から聞いていたの」

彼女から詳しい事情を聞こうとしたら…

「柚!!」

物凄い勢いでドアが開いた。

壊しちゃったらどうすんだよ…。

「柚!!勝手に離れるんじゃねぇ!!ほら、行くぞ!」

俺の腕を引っ張りながら言った。

「お待ちなさい。ファイステリトリーに用事があるのでしょう?簡単に会える方法があるわよ」

「誰だ?」

「甜花と由衣です。で、私達に着いていく?」

「…着いてってやるよ」

「兄さん!!」

「良いですよ。さぁ、行きましょう」

「行ってきます。御祖父様」

俺達四人はファイステリトリー家を目指して再び歩き始めた。

「あの、二人は……何か…」

俺は何かただならぬ用事があるのでは無いかと思い、言葉を詰まらせた。

「私達は神に仕える者。それと同時にファイステリトリー様の生け贄よ」

「生け贄!?どうして!!?」

「私達は捨て子なの。教会であの御祖父様に拾われた。ほら、甜花と由衣って此処では『聖歌』と『天使』って意味があるでしょう?」

「それだけで生け贄にされるの!?」

「もっと酷い人はいるのよ。知らないの?」

「あぁ、此処に来たのは初めてだから…」

「やっぱ許せねぇ…まだ、そんな事をしてやがるのか…」

紗月は怒りの篭った声で言った。

「兄さん…。落ち着いて。今怒ってもファイステリトリーに勝てる訳じゃ無いんだ」

「そう…だな…」

その時…

「甜花様、由衣様、お出迎えに参りましたダーテと申します」

建物の上から人が降って来た。

「…お別れね。此処までの護衛ありがとう」

甜花はサラリと嘘を言った。

「さようなら」

由衣は後ろ手で一切れの紙を捨てた。

俺はそれを拾った。

「じゃあ、行きましょう」

甜花と由衣はダーテに着いて行った。

「……由衣!!」

「あっ!おい!柚!?」

走り出した俺を紗月が追いかけようとしたが…

「お兄さん。これ買ってかない?」

小さな女の子に裾を捕まれ見失った。


由衣が落とした紙には『ファイステリトリーは貴方の失われた記憶を持ってる。そして、本当の肉親は誰かが分かるわ』と書いてあった。
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