双世のレクイエム

▼2:Excited match




それは突然のことだった。

突如としてあらわれた朱龍。暴れる尾に飛び散る校舎の破片。
血走った緑の眼がぎょろりとこちらを向き、固まる生徒たちに睨みを利かせる。


「グルルルァアアアッ!」

「……っ」


朱龍が吼え、建物全体が地震がきたように震える。それどころか、生徒たちの鼓膜にもビリビリと振動を与えた。

突然の龍の襲来。

他の生徒たちが叫びを上げて逃げるなか、新入生として校舎案内をされていた青年・【クロイ・ウェルダン】は校舎の外で暴れる龍を見上げる。


鋭い牙の並んだ大きな口を開き、何もかも喰らいそうな勢いで校舎を壊す朱龍。その姿はまるで自我を失ったようだ。

バチッ、朱龍と目が合う。それでも青年・クロイはその場から決して逃げようとしなかった。
なぜなら視えるからだ。


「グルルルルル…」

「……。」


朱龍もクロイを見たまま動こうとしない。が、ふいっと顔を逸らし空に向かって吼えた。
周りから聞こえるのは生徒たちの悲鳴。

そして、視線を戻した朱龍がこちらに向かって襲いかかる。


「キシャァァァアアアアッ!」













「どこ向いてますのん。あんたの相手はこっちどす」

「!」


弾ける光。
流れる風。
ぴたりと動きを止められた朱龍とクロイの視線の先にいたのは、


「ほな、どないしてやりましょか」

<ははははは!手加減してやれよぉ?リャオ>


指先から蒼い炎を灯らしニヤリと口角を上げる、白銀の髪をした青年だった。
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