双世のレクイエム

其参:本気でござる




付き合ってられない。と、呆れ半ばにクロイは溜め息をつく。

新人エリート育成プロジェクトにて、第7グループとなってしまった彼は、クエスト『猿の子の相手』を受けていた。

おなじ第7グループのメンバーは、ワックスをべったべたに塗りこんだ気色の悪い連中ばかり。
おまけに成金野郎ということで、クロイは自身の所属する第7グループに嫌悪しか感じていない。


もとより、自分がどのグループに所属しようが、どうでもよかったのだ。いずれ自分はこの学園でエリートに育て上げられていくのだから。
チームなど関係ない。個人の問題だと。

しかし、選んだグループが悪かった。いや、実際選んだというより勧誘されたのだが、まあそれは置いといて。


クロイを誘った第7グループの連中は、壊滅的レベルなほどに、弱小だった。
よくもまあ、その程度で偉そうな態度を取れるものか。


はぁぁ。クロイは深く、深ーく、何度目か分からぬ溜め息をつく。

クロイ以外の第7グループのメンバーは皆、サルに捕まり拷問のような処遇を受けているという。
同じグループといえど、内心ザマァである。いい薬になったことだろう。


にしても、と。
クロイは松の木の枝に座り込み、一体どれほどの時間が経ったろうと首を動かす。
そろそろ尻が痛くなってきたなと、思ったその時であった。

ドカーンッ、と爆音が響いたのは。


「?!」

「うひゃあ…、すんげー」


驚き目を見張るクロイに、たまたま偶然近くにいた神猿兄弟の長男・ミナイ。

どうやらミナイはクロイに気づいてないらしく、間抜け面で爆発の起こった遠くを見つめる。

一体何が起こったのか。

ミナイ同様、気になったクロイはその原因の元へと足を向かわせるのだった。








「あーあーあー、ったく。やってらんねえな。俺様の力じゃ、クソ猿共にはちとキツいんじゃねえの?」

<ひゅーっ、レンちゃんたら雑ぅー!>

「るっせだまれショタコン!」


神社裏にて。

爆発の原因となったワタル。あいや、ワタルに憑依した豪蓮は、ぼりぼりと首を掻きながら、爆発させた地面を見下ろす。


豪蓮に憑かれたワタルの髪は長くなり、吸い込まれるような真っ黒い艶髪が爆風の残りになびいていた。

ワタルのぱっちりした目とは違い、目つきの悪く燃えるような紅い瞳は、どこか若干豪蓮を思わせる。

自信たっぷりに口角を上げるワタルの表情は、豪蓮そのものだ。


「さーて、不本意ながらアホ猿共の相手でもしてやりますか」

<ものごっつ楽しんどるように見えはりますけど…>


苦笑いをする療杏に、ワタル兼・豪蓮は豪快に笑うのだった。

嗚呼、ワタルのイメージが崩れていく。
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