ラベンダーと星空の約束
 


驚いてそう言うと、たく丸さんは頭を掻きながら照れていた。



亀さんはお手本にたく丸さんからって言ってたし、きっとこの中で一番上手いのだろう。



よしっ!
もっと近くで観察して、自分の番までにコツを掴まなくちゃ!



何気に昔から勝負事には燃えるタイプだった。


毎年正月には、
うちと大樹の二家族で、カルタトランプ大会をするのが恒例行事なのだが、

私は誰より真剣で、負けると本気で悔しがる、そんな性格をしていた。



二杯目…三杯目と流される素麺の動きと、
たく丸さんの手元を間近でじっと見つめ続けた。



最後の5杯目が流された後には、何となく速度とタイミングを掴んだ…気がした。



たく丸さんは5回の合計28本の素麺を掴み、
この記録は優勝に違いないと、亀さんが感嘆していた。



じゃあ28本を抜けば私が優勝なんだね?
よーし!頑張るぞ!!




「次、月岡さんやってみる?」


「はいっ! やります!」



張り切って即答すると、
亀さんは意外そうな顔をした後に、声を上げて笑った。



割り箸を持ち竹の前で構えを取り、2階の流星に声を掛けた。




「流星!
手加減はいらないから!いつでもどーぞ!」



「わ〜お。意外と熱くなる君に首ったけ〜。
竹だけに首ったけ〜なんて……」



「もうっ!
集中力、途切れちゃうから早く流して!」



「ごめ〜ん。
んじゃいくよー」




箸先と流星の手元に全神経を集中させた。

集中力を研ぎ澄ませたら、きっと麺の動きがスローモーションの様に………

見える筈がなかった。



一杯目の素麺は1本も掴めず、二杯目は2本、
三杯目も2本、四杯目は3本………



予想以上に難しい…
掴んだと思っても、速過ぎる水流に麺を持っていかれる。



たく丸さんの28本という記録が、いかに凄い物であるかを身を持って知った。



次で最後の5杯目…
もう優勝は無理だけど、合計10本位は取りたい所だ。



< 202 / 825 >

この作品をシェア

pagetop