ラベンダーと星空の約束
 


「おあいこって言われたからって、大ちゃんが傷付いてないとでも思ってるの?

全く…君は…
どれだけ鈍感なんだよ…」



呆れた目で見られた後、
語気を強めてこう言われた。



「そんな風に言ったのは、大ちゃんがどこまでも優しいお人好しだからだよ!

君の心の負担を軽くする為にそう言ったの!


それに、そういう風に自分に思い込ませないと、やってられない位に傷付いたからじゃないの?

君が現れて折角殻を破りかけたのに、前より心の中に閉じこもっちゃったじゃないか!」




「あ……

瑞希君…閉じこもるって…流星は……

慶子さんがお昼に食堂に来ないって心配してたけど……やっぱり…食べてないの…?」




「お昼は食べてないかもね。昼休みは空き教室で寝そべっている姿しか見ないし。

でも夜は食べてる。
と言うか、コンビニ弁当買ってきて無理やり食べさせてる。

ご飯も喉を通らない位、相当傷付けたんだよ。自覚しなよね」



「流星…」





どれだけ
私は愚鈍なんだろう…

流星は
深く傷付いていた…

傷付いてもなお、私を思い、
あんな事を言ってくれた…



流星…ごめんね…
本当にごめんね…




「僕は大ちゃんみたいに優しくないから、キツイ忠告するよ。良く聞いて。

大樹君を失うのが怖くて、彼を選ぶと決めたなら、それはしょうがないと思う。

だけど、その決意を持ってして、大ちゃんの側で生活するのはどうなんだろう?

君が側に居ると、大ちゃんは忘れる努力も出来ないよ。

言ってる意味分かるよね?
紫ちゃん、地元に帰りな」




瑞希君は私の目をじっと見据えて、キッパリと言った。

その強い瞳に、侮蔑の色は見当たらない。

ただ語気を強めて諭してくれている。



学校を辞めて地元に帰る…
確かにそれが一番いいと思う。


だけど…
無理なんだよ。




「私もそう思ったよ。
側に居ていい事なんか1つも無いって…

でも、うちには500万円もの大金を払う余裕は無いし…

柏寮を出るにしても、東京の家賃って高いんだね。

うちの学校はバイト禁止だから、それもどうしようもなくて…」




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