ラベンダーと星空の約束
 


流星には私が作った物だとすぐに分かると思う。

瑞希君は焼きそばとかカレーとか、簡単な物しか作らないから。



余計なお世話で有難迷惑な差し入れであることは重々承知していた。



一度私に『地元に帰れ』と言った瑞希君には、この余計な気遣いを叱られるかと思ったけど、

意外なことに彼は笑顔で了承してくれた。


流星も何も聞かずに食べてくれてるみたい。




流星を傷付けた日から一ヶ月。

彼は少しずつ、本来の調子を取り戻している様に見えた。



良かった…
体調を崩さなくて本当に良かった……



流星は体調管理には人一倍気をつけなければならない。



免疫抑制剤を一生服用し続ける彼は、風邪を引くのも命取りになるから…




 ◇


ある晴れた平日の放課後、

いつもの様に砂埃でザラつく2階の廊下にモップをかけていると、

一階がザワザワとやけに騒がしくなった。



様子を見に階段を下りると、シャワー室前で寮生全員が集まり話し込んでいる。



「どうすんのー?」とか
「今日は無理だな」とか、

その会話から察すると、何か問題が起きたみたい。



何があったのか、亀さんに聞いてみた。



「あぁ 月岡さん、少し困った事になってね。

シャワー室のボイラーが壊れたんだ。

修理を頼んだけど、早くて明日の夕方になると言われてしまって…今は冷水しか出ない」




最近シャワーの温度が安定しないと思っていたが、遂に壊れたのか。



古い建物は味があって好きだけど、こういう面は困り物。



冷水シャワー…
10月にそれはキツイかもしれない。



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