ラベンダーと星空の約束

 


 ◇◇◇


東京の7月の終わり、連日30度超えの真夏日が続いていた。



暑さに弱い私は、期末テストを目前にしても授業に身が入らず、ぼーっとしてしまう。



でも、ぼーっとしてしまうのは、暑さのせいだけじゃないかも。



去年とは違い、恋に悩む事もなく、平和な毎日にどっぷり浸っているからぼんやりしてしまうのだ。



そんな平穏な日々に掛かってきた一本の電話。



フラノの母からの電話に、ぬるま湯気分はたちまち吹き飛び、暫く悩む事になった。




『紫、夏休みいつからだっけ?』



「一週間後だよ」



『あーそれなら間に合うわ、
良かった』



「何が?」



『バイトの子が、急に7月いっぱいで辞めさせてくれって言うから困ってんのよ。

それも2人同時にだよ?

全く、こっちの都合もあるのに、近頃の若いもんは根性なくてダメだねー。

あんたもそう思わない?』



「お母さん、私だって、近頃の若いもんだよ…」



『あんたレジは出来そうだって言ったよね?

取り合えず今年も大樹に手伝って貰ってるけど、

あんたにあんまり負担掛けたくないし、後2〜3人欲しい所なんだよねー…』



「まさか……」



『そう! 流星ともう一人の…何だっけ?あの可愛い女の子』



「瑞希君だよ…男だからね?」



『そうそう、瑞希! その2人連れておいで。

3食布団付き、日給5千円でよろしく!』



「………」





この夏休み、流星と一緒にフラノに帰ろうとは思っていた。



でも、うちでアルバイトさせようなんて、微塵も考えていない。



流星も一週間位の滞在予定で、近くのペンションに宿泊して、

私が店に出ている間は、一人で観光でもするかな…なんて言ってた。



それなのに、母からの問答無用の頼み事を聞くとなると…

こう言う事態になるよね…



流星と瑞希君が約1ヶ月、うちで寝泊まりしながら店で働く。



当然店を手伝っている大樹と流星が、長時間同じ空間を共有する羽目になる。



< 493 / 825 >

この作品をシェア

pagetop