ラベンダーと星空の約束
ラベンダーの花言葉
1
◇◇◇
新年を迎えたばかりの富良野は、
畑や木々、点在する家や倉庫の屋根、
遠くに霞む十勝岳山系の峰々も、見渡す限り真っ白な銀世界。
雲の切れ間から陽が差し込むと、雪がキラキラ反射して、神々しさを感じる程に美しい。
雪原の中に点々と続く小動物の足跡。
小動物を狙い天空に弧を描くオジロワシ。
太陽が上っても大気は凍(イ)てつき、吐き出す息も睫毛も、たちまち白く凍り付く。
厳しくも美しい真冬の富良野。
この季節も、ラベンダーの季節と同じ位に好きだ。
久しぶりの雪景色を楽しみながら、父の車に1時間半揺られ、実家に着いた。
家の中は汗ばむ程に暖かく、父お気に入りの洋風暖炉に、赤々と薪の炎が揺れている。
母は「お疲れさん」と熱いココアを作ってくれて、
弟の青空は、お土産の催促で片手を出している。
その手に煎餅の箱を乗せると、
「げっ…今回は煎餅かよ…
姉ちゃんは饅頭とか煎餅とか、そんなんばっか。
ババアかっつーの」
夏に帰省した時より低くなった声で、実に可愛くない事を言うから、煎餅の箱で頭を叩いてやった。
うちのリビングに当たり前の様に居る大樹は、
ソファーにどっかり踏ん反り返り、テレビを見ている。
こいつはこいつで…
「よう、インフルエンザになんか掛かりやがって、
向こうでやわな体になっちまったんじゃねーの?」
相変わらずの憎まれ口を叩き、私をムッとさせる。
だけど、ニンマリ笑う口元が、明らかに私の帰省を喜んでいたから…
煎餅の箱で叩かず許してやった。
◇
スケジュール一杯で、楽しく慌ただしい日々が過ぎて行った。
父と一緒に雪の写真を撮りに出掛け、
母と大樹のおばさんと、女3人のんびり温泉に浸かった。
うちの高校の半分にも満たない量の、大樹と青空の冬休みの宿題を手伝わされ、
正月呆けでごろごろダラダラしている2人に
「腹減った。飯作って」
とこき使われた。
「お腹空いたなら、お餅でも焼いて食べればいいでしょ?
お節料理の残りも冷蔵庫に入ってるよ」
「正月料理は食いたくねー。もう飽きた。
ハンバーグが食いてぇ。後エビフライも」
「姉ちゃん、俺はミートソーススパゲティーな!」