ラベンダーと星空の約束
ツラッと嘘のカードを気づかれずに出す事はできるけど、人の嘘を見抜く事が出来ない。
やっぱり私は人の気持ちを見抜く能力を、置き忘れたまま生まれてしまったのかも。
東京で少しは鍛えられたと思っていたのに、鈍感振りはやはり健在。
凹むわ……
◇
家族と大樹と楽しく過ごす日々の中、流星とも電話やメールで連絡を取り合っていた。
マイナス30度の早朝、父と撮影したダイヤモンドダストの画像を流星に送ると、すぐに感嘆のメールが返ってきた。
『キラキラと朝陽に照らされて舞い上がる雪の結晶は、まるで紫みたいだね。
君の肌の様に透明感のある白く美しい雪。
君の心の様に清らかで眩しく煌めきながら、他者を惹き付け魅了する。
素敵な画像をありがとう。
俺の方は取り立てて君に見せる画像はないんだ。ゴメン』
その文面に、頬を赤らめ何度も読み返していると、
後ろから盗み見ていた大樹が
「おえっ」と吐きそうな声を漏らした。
「大樹、勝手に見ないでよ!」
「見なきゃ良かった。
恥っずいメール…やっぱ俺、流星苦手だ…」
◇
楽しい一週間はあっという間に過ぎた。
東京から富良野に帰る日は、流星と離れるのを淋しく感じ、
富良野から東京に戻る時は、家族や大樹と離れ難い気持ちになる。
雪原を飛び立ち羽田に降り立つと、地面は濡れたアスファルト色のダークグレー。
一気に季節を飛び越えてしまった気がして、当たり前の景色に違和感を覚える。
白からダークグレーの大地へ……
でもこれから流星に会えると思うと、暗い気持ちにはならない。
実家を満喫した後はこれから5日間、流星と瑞希君と3人で荷造りしながら、最後の柏寮での生活を楽しもうと思う。
私と流星が実家に戻る事を決めた日の夜、
私から話しを聞いた瑞希君も
「つまんないから僕も合わせて帰るかなー」
と言っていた。
この一週間、私達3人はそれぞれ自分の実家で過ごしていた事になる。
今晩はお互いの実家での話しをし合いながら、こたつで鍋をつつくのもいいよね。