あの日僕は死んだ。




とんとんと炊事場で母が漬物を切る音が響く

その側で温められている鍋からは、みそ汁のいいにおいがした

ガサガサと父親が新聞紙を広げながら、すでに作られていた卵焼きを口に放り込む

味が薄かったのだろうか、父親は料理中の母親に醤油を持ってくるように催促した



何気ない日常



僕は学生鞄を手にとり、いつもより進んだ時計を見て焦りながら半ば靴を履いて戸口を開けた

「いってきます。」


まだ、朝方で冷たい空気に僕は眉を寄せる


マフラーを持ってくるべきだったか



しかし、取りに帰る余裕はない

何せ、今日は大幅に遅刻して家を出ている

腕時計の針は、既に8時10分を打っていた


あと10分


いくら家が学校に近いとはいえ、走らなくては間に合いそうにない時間である

寒さもあってか、早く学校に着きたい一心で足が更に早まる





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