【完】小さなしあわせ、重ねよう。

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ゆっくり思い出すように、温かな気持ちで話始める。


「…実は俺母さんいないんだ。体が弱かったらしくて、俺が3歳の時に肺ガンで亡くなったんだ」


そん時のことを俺は明確に覚えていた。


「俺は母さんの死に目に会えたんだ。だけど親父は仕事があって会えなかった。すっごい悔やんでたよ」


…泣いてた。

どんなに辛いことがあっても一度も泣いたとこを見たことがないと母さんは言ってたのに、その日大声を出して泣いてた。

途中息苦しそうに咳き込みながらも、鼻水も垂れて涙とぐちゃぐちゃになってなってても、その日は母さんから一度も離れることなく泣いていた。


「それからはさ、親父とふたりで生活始めたの。親父、仕事人間だったから家事なんてひとっつもできなくて。飯なんて毎日朝晩コンビニ弁当で」


昼は幼稚園に通っていたから、栄養のバランスの採れた飯だった。



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