華は儚し

両手の人差し指をくねらせた桐里が

耳に届かないぐらいに小さい我儘を言う。


「…か、観光…とか、したいです…」



「……奇遇だな。私もだ」

「宗十郎様、大好きです!」


「おいおい…

人前ではよさないか。

でないと、私がどうなってしまうか」


抱きついて甘える桐里が

愛しくてたまらない自分に、

恥じらいを隠すことが出来なかったんだ。


余談だが、

江戸の街が綺麗に輝いて見えてしまう。


「ここの茶菓子は旨い」

「そうですね、美味しいです」
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