イケナイ狼君の××。


「一日なんてすぐ過ぎるよ!
それより早く行かなくちゃ!」


私は途中からダッシュで学校へ向かった。


「はぁ…はぁ…」


久しぶりに走ったから、すごく息切れがする…

そう思いながら走っていた時だった。
私の人生が終わりを告げたのは。


「どけどけどけぇぇぇぇえええ!!!!」

「へ…?」


右から大きい声がして視線を移した瞬間。

ドンッ

ものすごい勢いで誰かとぶつかった。


「イタタタタ…」


私は幸い道路側ではなく歩道側に突き飛ばされた。
かすり傷で済んだ。

キィィィィィィ


「うぉぉぉぉおおお!?」


今度はものすごい車のブレーキ音が聞こえた。
道路側を見ると、1人の金髪の男の子が道路に倒れていた。

も、もしかして…
さっき私とぶつかったのってあの人!?

よく見ると私が通っている高校と同じ制服を着ていた。


「あぶねーよアホ!」


引きそうだった車に男の子は怒鳴っていた。
そして私の方を見て、私と目が合った。

や、ヤバイ…!

咄嗟に逃げようとしたけど、どうやら足を捻ったみたいで動けない。
そんな私のところへつかつかと男の子はやってきた。


「おいお前…」

「さ、さっきはごめんなさいっ!!」


頭を下げてすぐ謝った。

な、なんか近くで見たらすごく怖い…!


「謝るだけで済むと思ってんのか?」

「へ…」


顔を上げると、男の子はすごく私を見下しながら睨んでいた。


「お前とぶつかったせいで道路に吹き飛ぶわ、車に轢かれそうになるわ、怪我はするわ、髪のセットは崩れるわ、オレの顔に傷はできるわで最悪なんだぞ!」

「……」


もういろいろ早口で言われすぎて聞き取れなかった…


「とりあえず・だ!
お前はオレに何かしら返さねーといけねーんだ」

「お金ですか?
治療費ならなんとか頑張りますから…」

「もっとだ」

「え!?えっと…
じゃあ食券10枚くらい差し上げます…」

「足りねー」

「…授業のノートとか代わりに全部とります…」


ていうか私なんでここまでしないといけないわけ!?
おんなじ学校だとは思うけど、学年だって知らないし、なんせ名前もしらないし初対面だし!!


「お前分かりやすすぎんだろ」

「え?」

「初対面で名前も知らない人になんでこんなこと言われないといけないのーって顔してんぞー
図星だろ?」


口角を上げて言う彼の言うことが的確すぎて腹が立つ。

なんなのこの人…
調子狂うなぁ…


「仕方ねーなぁ、名乗ってやるよ!
耳穴かっぽじってよく聞いとけよ?」

「は、はぁ…」

「オレの名前は、神風仁だ!
16歳高校2年生!覚えたか?」

「は、はぁ…」


同い年だったんだ…
こんな人いたっけ…?


「つーか、オレのこと知らねーのか?」

「知らない…です」


正直他の人に興味なかったし…
ずっと1人だったし…


「ありえねー!
同じ学年でオレのこと知らねーなんてな!」

「へ?」


私一言も同じ学年だなんて言ってない…
なんで知ってるんだろう…


「じゃあ、一匹狼の神風ってのは聞いたことあるか?」

「一匹狼の神風…?」


必死に脳をフル回転させてみた。

なんかどこかで聞いたことあるようなないような…
…あ!も、もしかして…!


「間違ってなかったらですけど…
私が中学3年の時に他校の男の子に絡まれた時に助けてくれた…?」

「おー!覚えてんじゃねーか!
さすがおれのしもべだな!」

「は、ははは…」


しもべじゃないっての!


「まぁ、とりあえずお前の名前聞いておくか!
今日から晴れてオレ様のしもべだしな!」


しもべしもべって…
でもツッコんだらめんどくさそうだから言わないでおこう…


「一応初めまして。
瀬戸ひかりです…」

「ひかりか!
なかなかの見た目との正反対っぷりだな!」

「なっ…!失礼な!」

「ハハハハ!」


なんか変な人に捕まっちゃったなぁ…
これから私どうなるんだろう?


「よろしくな、ひかり!」


神風さんはそう言って私に手を差し伸べた。

あ、なんだ!優しいところあるんだ!

神風さんに甘えて手を掴もうとした瞬間、


「ハァ?
お前の手じゃねーよアホ!」

「えぇ!?」

「塗り薬とか絆創膏とか買うからその金」

「……」


もし戻れるなら神風さんとぶつかる前に戻りたい!!!!
もうなんなのこの人ぉぉぉぉおおおおお




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