隣の部屋のナポレオンー学生・春verー



「……緋奈子?」


きっと青い顔をしているであろうあたしの顔を覗き込み、ナポレオンは声をかけてくる。


「顔色が悪いぞ。どうかしたのか?」

「あんたが食事中にえげつないラブレターを朗読するからじゃない。
胸にキス、程度ならまだしも、そのもっと下って……」

「別に最近の若者にしてみれば、普通ではないか?
キャンパス内でもよく小耳に挟むだろう。
『イった』とか、『ヤリ●ン』とか『ラブホ』とか……その他もろもろ」

「って!それ食事中にしていい話じゃないでしょっ⁉」



ここが大学の校内だから、まだいいよ?

でも一歩外に出たら、健全な青少年および初心な少女たちもいるわけだし‼

しかもナポレオンは無駄に声が通るから、余計に聞こえやすい。



中世フランスの恋愛事情がどうだったかは、あたしの知るところではない。

そんな18禁レベルの色恋沙汰だって、日常茶飯事だったかもしれない。

それにナポレオンの最初の妻・ジョセフィーヌさんは、浮気で他の男性と肌を重ねることなんか、いつものことだったらしいし……。

彼が生きた時代では、エロいこともお構いなく喋っても支障は出なかったかもしれない。

けれどそれにしたって、公共の場(しかも食堂)で破廉恥なことを聞き取りやすい声量で言っては、さすがにいけない。








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