落雁

「今日…かぁ」

ふと頭を過ぎる、ぼくの“ひみつ”。

今現在の僕の立場上、今日「暇」と言ってしまっては、怒られてしまうのだろうか。

すくなくとも、弥刀ちゃんは怒るだろうな。


怒って、泣いて、馬鹿みたいに泣いて、それで僕に襲い掛かるだろう。

そんなところを想像して、僕は笑いが混み上がってきた。

―――悪くない。

「いいよ、夜くらいに多分行く。」
『やりぃ!やっぱ司がいねぇとしまんねぇんだよな。んじゃ、いつもの所で』

一方的に着信は切れた。

この、背徳感。
背筋がぞくぞくするような、反抗心。

あの子は、どんな顔をするだろう。

ぞくぞくした。



僕がその家に顔を出すと、その子はいつもしかめっ面をする。

僕の顔を見ていやそうな顔をするのは、この子くらいだ。

生意気。でもそこが彼女らしい。

「弥刀ちゃん」
「呼ぶな、気持ち悪い。そして勝手に入ってこないでくれる」
「また筋トレ?将来の夢はボディビルダーなの?」

彼女はダンベルを勢い良く下ろす。

畳だったからよかったものの、フローリングだったら穴が開いていただろう。

そんな元気な姿にも笑いが混み上がってきた。


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